基本給の引き上げと、過去のボーナスのスライスが毎年毎年重なりあって支払われる状況は、伝統的な日本企業と同様の年功賃金そのものになった(例えば、2011年の給料は、ボーナスがゼロでも、2008年、2009年、2010年のボーナスのスライスが支払われる。2012年はスライスがさらにもうひとつ増える)。また、これは会社から見れば契約上必ず支払わなければいけないもので、以前の薄い基本給と変動幅の大きいボーナスという組み合わせの時と比べて、人件費を会社の業績に合わせて変動させる自由を大幅に奪い取り、経営を非常に不安定なものとした。
こうした過去に約束した報酬の支払いのために、新人の報酬水準は低いまま据え置かれることになった。これはまさに伝統的な日本の会社と全く同じ構造である。そして現在のように外資系投資銀行を取り巻く経済環境がますます厳しくなる中、耐え切れなくなり苦し紛れのリストラを断行せざるを得なくなったのだ。高名な経済学者が導入する規制というのは、多くの場合、思いがけない副作用をもたらし、往々にして本来の目的をかき消してしまう。「トレーダーのインセンティブを銀行の長期的な利益と一致させる」という高尚な理念が、このような結果になったことは大変興味深い。今や、外資系投資銀行業界は、市場の失敗と政府の失敗の宝庫となっているのだ。